認知症ケア手法「ユマニチュード」とは?初心者でもできる手軽さが話題に

介護業界で「ユマニチュード」と呼ばれる認知症ケアの手法が話題になっています。認知症の改善に効果があるだけではなく、介護の高度な専門知識がない人でも実践できるという手軽な手法ですが、実際にはどのような効果が期待できるのでしょうか。ユマニチュードの効果や実践する場合のポイントについてご紹介します。

ユマニチュードとは? 手軽な認知症ケアの手法です

ユマニチュードとは、認知症になった人をケアするための手法です。「見る」「話す」「触れる」「立つ」の4つの要素を基本とし、誰でも手軽にはじめられる方法として話題を集めています。

例えば認知症の人を「見る」場合、目線の高さを合わせて近距離で見つめることで、対等な関係であると伝えることができます。逆に相手を見下ろしてしまうと、威圧感を与えてしまうでしょう。視線を合わせることで、お互いに理解が深まるというメリットがあるのです。

とはいえ、このような基本動作に力をいれた介護は、今までも行われていました。介護施設でも、介護士が利用者に優しく話しかけたり、触れたりする場面をよく見かけます。では、従来の介護とユマニチュードの違いは、どのような点にあるのでしょうか。

ユマニチュードは「ケアする人とは何者か」という哲学に基づいた認知症ケアの手法であり、フランスのイヴ・ジネスト氏とロゼット・マレスコッティ氏によって作り上げられました。介護の方法論よりも信頼関係の構築に重点を置いているため、専門知識や経験に基づいた従来の手法とは性質が違います。また、4つの動作だけでなく150を超える技術により成り立っているという点も、大きな違いでしょう。

考案者が語るユマニチュードの効果

ユマニチュードの実践により、具体的にはどのような効果が期待されるのでしょうか? 考案者の言葉と実例を元に、改善例について見ていきましょう。

「強制的なケア」から「理解されるケア」へ

認知症の高齢者に、どのように対応するべきか。その疑問を解決するため、全国各地では定期的に研修会が開かれています。受講対象者は介護施設や病院の職員で、認知症患者との接し方に課題を感じている人が少なくありません。

研修会の講師として、ユマニチュード考案者であるイヴ・ジネスト氏が招待された例があり、同氏は研修内で、「ユマニチュードの技術を使えば、本人の望まない強制的ケアをなくすことができる」と述べています。

認知症になると、転倒防止などの理由から利用者を拘束せざるを得ない場面があります。ただし、このようなケアを行った場合、結果として利用者は不安やストレスを感じ、さらに症状が進んでしまう可能性があるのです。そのため、強制的ケアを排除した介護手法が有効だと考えられます。

NHKの番組でも大きな反響が

NHKの番組「クローズアップ現代」では、ユマニチュードを実践した結果、高齢者の状態が改善されたという事例が放送されていました。利用者に対して実践したところ、次のような効果が見られたとのことです。

【実践前の高齢者】日中はほぼ反応がなく、日を追うごとに攻撃的な言葉が増えていく。

【実践後の高齢者】攻撃的な言動がなくなり、社交的な姿が見られるようになった。

相手を見つめ、優しく触れるなどの基本的な手法を実践した結果、30分という短時間でみるみるうちに利用者の状態が改善されたのです。ユマニチュードを実践することによって、利用者との会話や笑顔が増えれば、介護職員のモチベーションも自然とアップするでしょう。

「4つの基本」を実践する時のポイント

ユマニチュードを行う前に、実践のポイントを知っておきましょう。「見る」「話す」「触れる」「立つ」の基本要素をどのように行えばよいのか、以下に具体的に見てみましょう。

  • 見る:目線を利用者と同じ高さにし、近い距離(20センチほど)で、親しみを込めながら見つめます。
  • 話す:積極的に会話をしましょう。ポジティブな言葉を加え、ゆっくりと話しかけます。
  • 触れる:利用者の体(手や背中)に、手のひらを使って包み込むように触れましょう。このとき、優しく声をかけながら丁寧に触れることが大切です。
  • 立つ:1日20分立てるようになることを目標とします。立てば筋肉を使うため、身体機能を保つ効果などが期待できます。また、自分の足で立つことにより、人の尊厳を自覚するという効果も期待できます。

数年後にはメジャーな手法になる可能性も

ユマニチュードは、基本的な4つの要素と150の技法で構成され、介護知識のない人たちでもすぐに実践できるという手軽さを持ちながら、大きな効果が期待できる手法です。発祥地フランスでは、すでに多くの介護施設がユマニチュードを取り入れています。日本にも普及しつつあるため、数年後には認知症ケアの一般的な手法になる可能性があるでしょう。

 

参考:

関連記事

  個人情報保護方針はこちらをご確認ください